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still remain the same / NATIVE SPIRIT (R)

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pretty muddy

たとえ夏でも、ラコタの地は曇れば涼しいを超えて寒くもなる。
風が吹いて雨が降れば、気温は一機に10度を下回る。
夏の終わりにもなればなおさらだ。

いつものように旅を続けて仕事も終え、最後の予定、
北の居留地のもうひと家族に会いに行く。
南の居留地から街まで2時間、街を越えて北の居留地まで2時間、
問題はそこからだ。
舗装済の道を抜けて砂利道を50kmほど走って
家族が持つランチのゲートにつく、
そこから丘をいくつかこえて
5kmほど中に乗り入れたところに家がある。
晴れてれば問題はないけど、その日は雨。
車は4WDじゃない。
もっている3種類の携帯はどれも通じなくなる。

たどり着けないだけならまだしも、
立ち往生する可能性もある。
すれ違う車もめったにいないような所でだ。
不安になりながら、ハイウェイを北へ向かい、
携帯の電波状態を確認しながら、
途中途中で家族に電話して道路の状況を聞く。
"pretty muddy" ひどくぬかるんでる・・・そうだ。
ランチの家族が言うんだから相当なもんだろうと
想像しながら憂鬱になる。

雨は小雨で曇りになって、
グレイだった空はところどころ雲が薄くなって白くなってきた。
しばらく強く降ることはなさそうだ。
涼しいせいか、普通は朝と夕方に出てくる動物たちが、
午後から活発に動いてる。
トカヘナジはしきりに車窓からカメラを構え、
後ろの席ではワンブリとキミミラが遊んだりケンカしたり寝たり、
とーちゃんはただただ走破できることを祈るばかり。

いよいよ、ハイウェイを外れて砂利敷きの居留地道に入る。
携帯の電波表示は・・・かろうじて1本がついたり消えたりだ。
案の定、車は面白いように流される。
わずかでもぬかるみが少なそうな轍を慎重に選びながら、
車幅の5倍はありそうな幅広い砂利道を粘土状の泥を巻き上げながら、
右に左に斜めに走っていく。
晴れていれば、砂利道でも90km/hは出して行ける。
(狭い日本じゃ危ない)
4WDならちょっとラリー気分で130km/hでも行ける。
(一人で走るときだけ)
雨でぬかるみ、2WDとなればオハナシにならない。
時に20km/hまで落とし込む有様だ。

いつもよりだいぶかかって砂利道を超えて、
やっと家のランチのゲートまで来た。
そのゲートの先、丘陵地5km先に家がある。
ゲートの向こう、急勾配の丘を見上げる。
携帯の電波表示はとっくにない。
深呼吸してATを2速に入れ、ゲートを越える。
ローラーコースターが最初のスロープを登るようにのろい
アクセルを踏み込めば泥を掻いてはまる。
けどすでに駆動輪は空回りして、進まない。
幸いなことに急斜面だから、ハンドルを切って後ろにずり下がれば
やりなおしが効く。
スタック3回目にして断念した。
5km歩いて家まで助けを求めに行くことも覚悟していたが、
砂利道に戻って、来た道の反対側にある村までいけば
携帯が通じるかもしれない。

ところがその村に入っても電波表示は出ない。
しばらく携帯の電波表示を睨みながら村を越えてみる。
アンテナが1本立ったところで慌てて車を停めて電話する。
携帯の電波がワカンタンカに繋げられた。
丁度、心配したお父さんが様子を見に出て行った、だって。
ホッとして、ゲートに戻ると
泥で茶色い車になったでかい4WDが停まってた。

丘を越えられない2WDは
ゲートより先の砂利道沿いにある親戚の家に預けて、
僕らは4WDに荷物を移して乗り込んだ。

2006年 夏の終わり頃の話し

たいしておもしろい話しじゃないけど、
これを楽しめないといられない。
これがリザベーションロード
晴れても雨でも、リザベーションロードを走る車は
泥と埃と虫だらけになって、
小石が飛んで窓にヒビ、ボディにえくぼを作り、
腹をこすって、やがてマフラーを引きずり、落として
"reservation car"へと変貌してくんだ。

この時にTokahe-naji-winnが撮った写真が
今月末発売のフリー&イージー誌に掲載される。
遠回りしなければならない旅は贅沢でいいもんだ。
いつもより風景が焼き付くし、
いろんな瞬間に立ち会うチャンスが増えるからね。

by cwdye | 2006-12-27 02:46 | episode エピソード
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