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still remain the same / NATIVE SPIRIT (R)

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easy people

若い兄弟が儀式に出るというのでサポートに行くことにした。
叔父にあたる兄弟がセレモニーのグラウンドの脇に
大きなティピーを2つ立てて、僕らにひと張り与えてくれた。
ことあるごとに借りてたティピーだった。
儀式は荘厳に行われ、周りを囲んで見る僕らもまた祈りに行く。
女性は生理中でないか問われ(参考参照)、
みんな靴を脱ぎ裸足になって清めを受けてからグラウンドに入る。
出入りは自由で、それからグラウンドとティピーの間を何度となく行き来した。

儀式のドラムと唄を背中に聴いてティピーの前で
キャンプ用の椅子に座って脱力、
空気と風景と同化できる錯覚が味わえる時間だ。
他愛ない話もしながら、隣に座った兄弟が
ティピーの上に突き出たポールの周りを飛ぶトンボを数え始めた。
トンボの数を数えたんじゃなくて、
トンボがティピーのポールを周って何回輪を描くか
1,2・・・、1、2、・・・1、2、3・・・1・・・1、2・・・
僕もいっしょに数え始めた。

儀式が終わるころ、ティピーは後で片付けに来ることにして、
僕らは儀式に出た若い兄弟を家で迎えて祝福と感謝のふるまいをするため
先にグランマの家に帰って用意を始めた。

「トンボがティピーの上を周るんだけど、なかなか4回周らなくてさ」
そう、僕らはトンボが4回周るのを待って数えてたんだ。
4回、4、この基本の数字、4回続けばなんでも有り難い。
それだけでご機嫌になれる。
儀式の唄と祈りの脇のティピーの上なら、尚有り難い。
「私達ってなんてイージーなんだろね」グランマが笑って言った。
そうなんだ、ものすごく真剣にイージーなんだ。
僕が彼らの中に入っていった理由のひとつでもある。

外でハンバーガーのパティを焼いていた僕は、
突然のサンダーストームに見舞われて、
ストーブの蓋を閉めなきゃならなくなった。
チャーコールなんか使ってるのにそりゃマズイ、
でも閉めなきゃすぐにバケツをひっくり返したような雨でどの道だめになる。
雷はいよいよ近付いて慌てて蓋を閉めて家の中に入り
冷たい大粒の雨で濡れかけた体を拭いた。
「ダイは雷が怖いらしい」グランパが勘違いして笑った。

グランパが亡くなる少し前の夏の話。
それからもう10年にもなるか。
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Teepee Moon / 1999/ Tokahe-naji-winn・Ogla Naoko(C)

参考;ネイティブスピリット公式ウェブサイト 旧コラムページ「儀式」「続・儀式」
http://www.native-spirit-trd-pst.com/CULTURE%205.html
http://www.native-spirit-trd-pst.com/CULTURE%2013.html
by cwdye | 2007-03-03 02:34 | culture 文化
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