1979年、夏のある日、
ウィネベゴインディアンリザベーションの中に土地を借りている
アングロの農場の一家に世話になっていたとき、
街に出る日がきた。
それまでは町といっても店が5件ほどしかない
近くのゴーストタウンのような町しか知らなかった。
その日は2週間分の買い物をまとめてする日。
フルサイズのステーションワゴンで3時間
街は
ミズーリ川を挟んでネブラスカとアイオワに跨っていて
そのアイオワ側まで出かけた。
初めてアメリカの街を体験した日だった。
ニューヨークより、シカゴよりも、メジャーな都市より
だいぶ小さい街だけど、場所が場所だけに
文句はないし、僕には充分だった。
数時間の買い物のあと夕食をとって家路についた。
陽は傾いて、空気の温度が変わると気圧が変わり
雷雲が現れる。
街を離れ、あたりは平原、
陽が落ちてヘッドライトの照射範囲以外に何も見えなくなったころ、
眠くなって頭を背もたれに預けて、
黒い雲が星を隠して広がっていく空を
ウインドウごしに見ながら眠りそうになったそのとき、
一瞬、空を這う稲光が雲の間を
まるで蜘蛛の巣のように網目になって天に広がった。
天然の花火だ、それも巨大な。
それが忘れられず
以来、稲妻ウォッチャーになった。
それから10年後
インディアンに出会う旅を始めてからは
雷好きは好都合になった。
インディアンにとって雷はワカンタンカの力を
目の当たりにさせてくれる有難いもので、
吉兆でもある。
ウィネベゴにしろオグララにしろ、
激しいサンダーストームが多い地域では、
素晴らしい稲妻を見ることができる。
どうしようもない状態で怖い思いをしたこともあるが
普段は一応危険を知ってのうえで
警報を聞きながら、必要とあれば避難して
危なくないようにして見ている。
追記
蜘蛛の巣状の稲妻は
小さいものは時々見れるけど
一面に広がるほどに見えた大きいものは
後にも先にも、ウィネベゴで見た一度だけだ。
啓示だったんだな。
わきんやん=ラコタ(語)で雷のこと。
カミナリはアイヌ語に残るカムイを含む古い言葉で解釈すると精の声になる。
wakinyan 2007夏に続く