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still remain the same / NATIVE SPIRIT (R)

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ラコタネーム

その人の名前の続き

ネーミングファーザーのミラパシネは考えた。
かみさんにはすでにイメージを持っていたらしく、
すぐ決まったらしい。
彼女にとっても名誉なことで、
ミラパシネは彼の祖母の名前をつけることにした。
問題はまだ生まれたばかりの娘だった。
彼女には彼女で生まれる前から続いていたストーリーがあった。
それを考慮しても、
生まれたばかりで性格も人格もできる前の赤子を
いったいなんと呼んだものか?
ミラパシネは考え込んだ。

今、かみさんの名前になった、
ミラパシネの祖母の名前だったトカへ・ナジ・ウィンは
「前に立つ女」という意味だ。
「--する--の女」
これがラコタの女の名前の習慣だ。
いちいち「--する--の女」と訳すけど、
日本人女性の名前でいうと
漢字二文字の後に子をつけるのと同じことだ。
一文字に子をつけるのに相当する「--の女」というのは無かった。
だけど、乳飲み子のうちはまだ何もしてないし
「何」を「どうする」「女=子」になるのかわからない。
数日後とうとうミラパシネも諦めた。
「普通は--の--の女と名付けるもんだけど、今の時代だ、
古い習慣にこだわらなくてもいいだろう。
ワンブリ・ウィン、これにしよう。」

かくして長女はワンブリ・ウィン=Eagle woman
鷲女という名前をいただくことになった。
掟破りのシンプルさだ。
まぁ、いい、いずれにしろ素晴らしい名前だ。
彼女にとってイーグルはコウノトリの代わりみたいな
そういうストーリーを持っていた。
ここだけは何があっても変わらなかっただろう。
それに後で名前が付け足される可能性もないとはいえない。
とにかく、これから彼女はイーグルとその周り、すべてに感謝して祈り、
僕らも祈る彼女に感謝する、
こうして繋がれることが有難い。

さてミラパシネの祖母の名前をいただいたかみさん、
その名前「トカヘ・ナジ・ウィン=前に立つ女」は
ミラパシネが英語で言ってもその通り立派な短文だった。
「フロントに立つ女」「最初に立つ女」
ミラパシネもいまいちその英訳が一定にならない。
確かにニュアンスが伝わる単語が英語にないことも多い。
チャングリシカ・ワカンという僕の名前も
「Power of the circle=輪の力」と言えるけど
これも正確な訳じゃない
ラコタネーム_f0072997_9404516.jpg

そして年月を経て今年の夏、パインリッジに滞在中のこと
パウワウのバーガースタンドでバーガーを買って、
スタンドが用意してくれてたピクニックテーブルに座った。
そこへ、フルブラッドのおじいさんが座ってきた。
挨拶を交わしてくれて、
どこから来たのか、どこにいるのか聞かれた。
年の頃からしての想像通り
僕らを迎えてくれた故人グランドファーザーテッドとは友達で、
かつての日本と戦うためにいっしょに太平洋に出た
戦友でもあったそうだ。
その会話の中で、トカへの名前を聞いたおじいさんは
「ほう、ファースト・ウーマンか」
そうか「ファースト・ウーマン」でいいのか。
なるほどそういえばFirstは1番目、その通りだ。
すっきり呼んでくれた。

ミラパシネの祖母、トカへ・ナジ・ウィンは100歳を超える高齢で
1973年ウンデッド・ニーの蜂起に、
部族会議のエルダーとして参加していた
まさに「前に立つ女」だったんだそうだ。
ミラパシネは
母親として、カメラマンとしてキャリアを重ねるかみさんに
「前に立つ女」のイメージを持ったらしい。
その時僕はそれほどかみさんが
「前に立つ女」ではないと思っていたんだけど、
最近子供たちが大きくなるにつれて、
仕事で駆け回りながらPTAの仕事もこなしたり、
その「前」が「リーダー」ではないにしろ、
「率先」する「ファースト」であることは言えると思えた。
(どちら様のお宅も女親のパワーには感服なんだけどね、
こう言うと晩のおかずが一品増えるかも知れないだろ?)

その後、次女が生まれて
彼女は「Kimimila-ska-winn」=「White butterfly woman=白い蝶の女」
という名前をいただくことになるんだけど、
これはミラパシネが自分でも驚くほど簡単についた名前だった。

白い蝶につづく
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Shield mark シールドマーク 
Naming Father ネーミングファーザー
ラコタネーム
その名前の生き方
その人の名前
by cwdye | 2007-12-11 08:42 | culture 文化
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