別に高価なものでなくても
ずっと欲しいままでいつまでも買えないものってある。
バンカーズランプってのが僕にとってそのひとつだった。
バンカーズ、つまり銀行家のランプに始まるらしい
そのランプを初めて意識したのはもう30年以上前になる。
小僧っ子の溜まり場だった喫茶店に置いてあった
骨董品のランプがそれだったんだ。
その頃にそんなに印象的だったのは、
古くさいデザインだったからだろうな。
それ以来、アメリカの映画やドラマの中で
古風に調度された事務所や書斎のデスクに
そのランプが置いてあることが多いのに気がついた。
昔の銀行、弁護士事務所、探偵の事務所、
マフィアの書斎なんかにもあったかも知れない。
劇中のダークオークの机にその個性的なシェードが見えた。
そうしていつしか、
そのランプがバンカーズランプと呼ばれて、
デザインを増やしながらロングセラーになった
クラシックでスタンダードな定番品だったことを知った。
定番品だから、わざわざ古物を探さなくても、
アメリカの量販店で新品が販売されてる。
それだけポピュラーなものと知っても
興味は失せなかった。
骨董品でなくて構わない、
スタンダードで当たり前なそのランプを
普通に机の上に置いてみたかった。
デスクワークが多いわけじゃないし、
気取った書斎が欲しいわけじゃない。
ただそのランプがぼんやり光る風景に憧れた。
でも、家にも仕事場にもそれを置いて
絵になるような机も場所もなかった。
2008年、ギャラリーを移転、新装するにことになって
かねてからの希望だった1900年代初頭のスタイルの
トレーディング・ポストを模する内装にすることにした。
やっとバンカーズランプに相応しい部屋が手に入る。
こうして、初めて意識してから30年、
欲しいと思ってから20年たってやっと買う気になった。
わざわざアメリカ滞在中に買わなくても
緑のシェードと真鍮製のスタンダードな新品が
日本でも数千円で販売されてる。
それを買ってロールトップデスクに置いた。
念願かなった風景が手に入ったわけだ。

新しいギャラリーをオープンして1週間ほどたってからか
妻で写真家の
トカヘが開店祝いをくれるという。
バンカーズランプだった、
しかも1920年代当時の実物のアンティーク
こっそりアメリカのサイトで探して取り寄せてくれてた。
シェードの形は同様でも
スタンドのデザインは見たことがない重厚なもので
金具類も20年代当時の味を醸して、
何よりシェードのガラスの色が当時らしく
今のように安定した色になっていない。
ロールトップデスクの上にあった
現行品のバンカーズランプには退いていただいて、
アンティークのそれに入れ替わった。

新品のバンカーズランプは自宅で
トカヘのスタジオに置かれるかな。
参考;
Report 滞米記
culture文化
episode エピソード
作品に関する参考;
作品販売店
introduction紹介
reference 参考